肩 車 考  柳田国男

筑摩書房 抜粋

肩車(肩駒・肩馬)
小さな児を肩の上に、両足を頸の左右に跨らせてのせて歩く風習。

全国的で相応古い頃からあったものと思われるが、地方毎に名が違っている。
信州上水内郡ではテングルマ・テンコマ、佐久はチンコロバ・タンコロ
長野市はテンコロマイ

子どもの世界からも、この楽しみが消えようとしている。

胴上げ 昔の手車と同じ状態。
肩車の風習が忘れられ、内容のみが残っているのが胴上げ。多人数の力を頼んで突きあげ、宙に舞うという行いは加わっているが、その点を除けば手車と同じことをする。

現在まだ成人の間にも、ある条件のもとに保存せられ続行せられる「胴揚げ」という行事のごときも、多勢の力を頼み離したり落としたり、やや荒々しい取り扱いをするという一点を除けば、これもまた昔の手車の遺風だということができるのであった。ただこれに関与する人々が自ら心付かず、また何ゆえにこういう奇抜なことを、今でもめでたい日の中心人物に対して企てるかを、ついぞ考えてみようとしなかっただけである。我々の新しい学問の働くべき余地はここに存する。

共通点は、人の足を地に着けさせまいとするところ。
異なる点は、一方は何人もの多くの手を要する、一方は一つの肩をもって足りる。
人の足を地に着けさせない。

神は御身を地に触れさせたまうものでないという観念。土を忌む風習。身体の地につくのを畏れた理由(推測)
本人に備わった霊力・徳が地を伝わって逃げてしまうと考えた。
仏像 蓮台・白象・白鹿に乗る。 足を地に触れない点で共通。
祭礼の稚児、婚礼の花嫁。