善光寺の「胴上げ」儀式 長野県教育委員会

長野県民族資料調査報告7「信濃善光寺正月行事」より

善光寺の胴上げ儀式は、如来ご越年式において行われます。
善光寺正月行事「堂童子」については、当ホームページを参照してください。
胴上げは、如来ご越年式の項目の中の祝儀「堂童子渡し」で、次の手順で行われます。
儀式中、頃合いをみて堂童子は後住を前に招き、堂童子の引き継ぎを行う。これを「堂童子渡し」という。

式は、堂童子三組木盃の一の盃をとつて後住に進め、給仕冷酒を注ぐ。更にこの時堂童子は肴である大根及び葉済を懐紙に取り分けてこれを後任に呈す。
この時、院代発音して、

一花開くれば天下みな春なれや
よろづよのなお安全ぞめでたき

を唄ひ、一同これに唱和す。ついで後任は冷酒を干して堂童子に返盃し、前と同様肴を懐紙に取り分けて、堂童子に呈す。堂童子うけが済むと後住は浄衣を脱ぐ。

次に、老僧、三組木盃の一の盃を大勧進執事に、二の盃を大体鯨執事に進め、同時に肴を前同様にして両人に呈す。これが済むと大勧進執事が発音して、謡曲千秋楽を謡い、両執事より臈僧に祝盃を進め、肴を加え呈す。叉臈僧より、両執事に盃を返し、以後随意に飲酒す。飲酒のころ合を見て、一同起立し、どう突祝(胴上げ)を行う。
順序は先づ堂童子、続いて院代後住、又後住、大勧進執事、大本願執事の順に各三度ずつ、
わいしよ、わいしょと胴上げをし、終って拍子して祝儀一切を終了する。

この時、始めて、梵鐘を撞き、大鼓を打ち鳴らし、越年式の終たつことを堂の内外に知らせる。
院代及び両執事が退出すると、座を整え、出入口を密閉し、堂童子を中央に、仲間一同その後に半円形に座し、黙南新念の後、堂童子は、東・西・南・北・天・地に向って豆打を行い、如来前に備えた御神酒及びおからこ包を仲間に授け、三礼して、御供所の行事を終了す。

一同は、堂童子、後住、又後任を残し、直ちに堂童子の妨、次に後住、つづいて又後住の坊に赴き、玄関で夫々の家人におめでたうと挨拶し、終って、各自坊に引取る。
一方堂童子は御供所に残って、御越年式の祭典などを取まとめ、後住は本堂に登り、内陣に入って本尊・三脚・結界・舎梨塔前に香を捧げ、高座の西脇に座して祈念を行う。
後任は、この時から以後、毎朝看経を行い、夜は参篭して十二月晦日に及ぶ。同夜よりは堂童子が参篭することになっている.