重要文化財
善光寺 三門 平成大修理

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I. 三門のあらまし
寛延三年(1750)建立。(工事費3,788両・ご本堂建立より43年後)
間口20.398m、高さ20.448m、奥行7.999m、屋根面積883.972平方メートル。
五間(正面柱間5)、三戸(通路3)、二階二重門、入母屋造、桧皮葺。
国宝善光寺本堂と調和した、関通迷悟を本義とする堂々たる建築であり、昭和40年(1965)5月、国の重要文化財に指定されています(文化財保護委員会 告示第1596号)

二階楼上には、中央に智慧を司る文殊菩薩、その四方に災厄をはらい、福徳を招く四天王像(持国天・増上天・廣目天・多聞天)が安置され、腰絵に白蓮華、欄間に吉祥天女が彩られており、俗界を離れたみ仏の世界を現しております。

鳩字の額で知られる正面の扁額「善光寺」は、輪王寺門跡公遵親王の御筆で、天保3年(1830)に掲揚されました。

また、外廊からの眺望は壮観であり、仏都長野の発展を見守っています。

三門楼上へは、毎年正月・春秋彼岸などの日を限って、一般参詣信徒の登門が許されていましたが、昭和40年以降数年にわたった松代群発地震により中止されています。
このたびの大修理完成の暁には、再び登門が適えられる事を念願しております。
楼上中央壇の吉祥天女絵
楼上中央壇腰絵白蓮華

II.三門保存修理の経過
建立からの保存修理工事は、主として屋根葺替えを、ご本堂修理に併せて行われてきました。屋根葺材は、大正10年(1921)12月、本堂屋根が桧皮葺となるのに伴い、三門も厚板葺(とち葺)から桧皮葺に改められました。

昭和40年(1965)の松代群発地震では、三門下層軸部を応急補強処置。昭和48年(1973)屋根桧皮葺替及び落雷防止工事。昭和58年(1983)石段、玉垣、石積み、敷石の補修などの保存修理に努めてまいりました。

しかし、近年に到り柱の傾斜、軸部の変形など、各所における老朽化が進み、また、屋根桧皮葺も葺替年限に達している等、至宝保存のための抜本的保存修理が必要急務となりました。

建立以来の大修理となるこのたびの修理事業は、具体的には平成9年(1997)の御開帳終了を機に、文化庁・長野県・長野市等所轄官庁及び関係方面の指導を仰ぎながら、数次にわたって破損状況等の調査を行い、修理計画の手筈を整えて着工し、赤誠以て事業の完成を期するものであります。

III. 三門平成大修理事業のあらまし
(1) 工事内容
半解体修理及び屋根桧皮葺替。
その他、構造補強、上層内部彩色複修、障壁画補修、火災報知器など防災設備、
並びに周辺整備等。
(2) 工事期間
平成14年(2002)10月1日から平成19年(2007)12月31日(63カ月間 )
(3) 総事業費(予定額)
941,400,000円
(4) 勧募目標額
330,000,000円
IV.工事組織
事業主 宗教法人 善光寺
設計監督  財団法人 文化財建造物保存協会
同上協力 株式会社 中村建築研究所
施  工 北野建設株式会社(第一期工事)
屋根工事 株式会社 児島工務店(第二期工事)
社団法人 全国社寺等屋根技術保存協会
涼しさや ここぞ浄土の はいり口(無 端)
ここは文殊の浄土にて 常に笙歌の花を降らしめ(謡曲 石橋)
上層屋根の棟部材の脱落
棟部分の銅製見切部材の脱落
桧皮の著しい劣化・破損
屋根の棟から脱落した銅製部材の撤去作業
上層木組鉄砲虫被害
楼上内部落書き
上層屋根垂木組
楼上内部
三門正面図
三門側面図
区 分
適 要
寸 法
一階 二階 合計
桁 行 桁行両端柱真々 20,398m 19,598m
梁 間 梁間 〃 7,999m 7,999m
軒の出 側柱真より茅負外下角まで 4,311m 3,736m
軒 高 柱礎石上端より茅負外下角まで 6,049m 13,094m
棟 高 柱礎石上端より棟頂上まで 20,448m
平面積 側柱真々内側面積(平方メートル) 163,167 141,086 304,250
軒面積 茅負外下角内側面積(平方メートル) 482,341 397,144 897,485
屋根面積 平葺面積(平方メートル) 303,552 580,420 883,972
V. 三門と山門について
飛鳥天平の時代、寺は殆ど平地に建てられていましたが、平安時代になると天台宗を中心に、山中に建てられることが多くなり、中国の呼び方をまねて山号をつけるようになった。その後、山中も平地の寺にも山号がつけられ、中央に一つの門と左右に仁王像等を配する第一門を「山門」と呼ぶようになった。特に禅宗の楼門をさして呼ぶことが多かった。曹洞宗の大本山永平寺の「山門」はこの代表的なものである。

しかし、同じ宗派の大本山である総持寺の楼門は「三門」と呼ばれている。この「三門」は三解脱門の略称で、悟りの境地を目指し、涅槃に入るための三つの法門を指しています。一つは執着の心にとらわれない知恵門。二つは慈悲の心を持って区別や差別をしない慈悲門。三つは自分の欲望のままに行動しない方便門。以上の三つを深く心に思い続けることが悟りへの道となる。

主に大きな中央の門と左右の小門が連なったものを「三門」と呼んでいる。一つの門の「山門」と、三つの門の「三門」と形は分かれているが、何れにしても寺の門をくぐることにより仏の世界に入ることを意味している。「三門」では総本山知恩院(木造世界一)と大本山増上寺の朱塗りの「三解脱門」、日蓮宗の総本山である久遠寺の「三門」はよく知られている。

「山門・三門」をくぐるとそこは俗界を離れた御仏のおいでになる清らかな世界。一段一段登りながら世俗の塵を払い落とし、知らず知らずに犯した罪を洗い流して悟りの境地に入ってゆくもの。「山門をくぐれば仏の世界、たとえ一時でも欲望の世界を欲望の世界を離れて仏たちと心を通じ合おう」と山門の脇に書かれていたのを思い出される。

 

VI. 三解脱門
仏道の障りを離れる三種の門(知恵門、慈悲門、方便門)とか、涅槃寂静の地に入る空・無想(すがたなく)・無作(はたらきなし)の三解脱門とか、中央と左右に相連なる三つの門とかいろいろな説がある。一つの山門もあり、三つの山門もあるがいずれも正しい。山門と書くのは寺院はすべて山号をもつからである。楼門には五百羅漢や仏像を安置したりする。
智慧
梵語のプラジュニャー(般若)の訳。事理を照見し邪正を分別する心の作用。人生や社会の真実の姿を見極め、これをつかむはたらきを言う。知識がものを分析的に判断する能力であるのに対し、智慧は全体的に直感する能力である。大乗仏教の実践徳目(六波羅蜜)の第六番目に掲げてあり、《仏》とはこのような智慧の完成者である。

仏教ではこの智慧を「有漏智」と「無漏智」とに分ける。有漏智は差別を知り分ける智慧で「知識」はこれに属する。無漏智は知識を得る可能性であり、これを仏の「根本智」ともいう。例えば2と2を加えれば4となることを知るのが有漏智で、2と2を加えれば何故に4となるのかを知るのが無漏智であるといえよう。

慈悲
慈しみと同情。すべての人々へ楽を与えるのが「慈」で、人々の苦をなくすのが「悲」。訳して「抜苦与楽」という。喜びは人々と分かち合うことによって倍増し、悲しみは人と慰め合うことによって半減する。慈も悲も、ともに表裏一体をなす仏教の実践徳目である。

方便
《方法便用》の略で「真実に到る巧妙なる手段」を言う。人を導くにあたってその人の素質や性格、またその時と場所など、種々の事情を考慮して常にもっとも適切な方法・手段をとること。転じてウソも方便といってウソを正当化する便利な言葉になり「仏に方便・聖人に権道」「武士に戦略・坊主に方便」などと策略・欺瞞の意味となった。

 

◎関通迷悟の本義
「悪を防ぎ善を導き、迷を関(ふせ)ぎ悟を通じ、染浄を境し、真俗を分かつ」の意味
◎三門を入り来る人に安らぎを、三門を去りゆく人に幸せを
VII. 平成大修理 
◎平成15年写真
三門素屋根夜景 10月5日
三門素屋根組立 10月16日
素屋根組立11月15日
素屋根組立11月15日
素屋根組立
素屋根組立(お上人様朝事帰り)
南面棟銅板と桧皮11月18日
西南面屋根11月18日
西懸魚の風化11月18日
素屋根張り11月18日
三門大修理解説掲示12月25日
三門図面
解説 和文(原文はホームページ参照)
解説 英文(原文はホームページ参照)
◎平成16年写真
境内全景H16.4
桧皮葺下地H16.4
桧皮葺と厚板葺の様子
東妻入りから見た軒先のたわみ
桧皮葺下地H16.4
東妻入りH16.4
上屋根東桧皮組
桧皮葺先端H16.4
屋根裏木組
上屋根東先
屋根組
屋根上層材(杉材)
屋根大棟材
上層東妻入り軒先桧皮

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